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教職員と研修〜公立学校の教員の研修をどう取り扱うか。

教育公務員は研修について特別な取扱がある。この点を整理する。公立学校を設置する自治体の教育委員会事務局としての視点だ。

研修の位置付け

教育公務員(教員・校長・事務職員)は、人間の発達を助け、人格の完成を目指す教育活動に関与している点において行政職(つまり、教育委員会事務局職員など)とは性格を異にしている。その中で、教育公務員にとっての「研修」は、行政職の研修における能率的見地におけるものではない。教育公務員の研修とは、教育活動を成り立たせるための必須の基礎的前提として位置付けられている。

この重要性は、教育公務員特例法(昭和24年法律第1号)に定められた研修条項が「(この条項があって)はじめて、教育者が一般公務員から切り離されて、特別に扱われている理由がはっきりのみこまれる」と説明された点からも窺い知ることができる(文部省内文教研究同人会『教育公務員特例法解説』(1949,文治書院,46p))。

以上をふまえ、教育公務員を管理監督する教育委員会事務局においては、教育公務員の研修が生徒等への教育責任を果たす義務的性格を有する権利であることを基点として、研修参加に係る環境を整え、助言指導を行うことが重要であると考えられている(平原春好『教育行政学』(1993,東京大学出版会,210p)。

研修の種類

研修の種類は、概ね次の3種である。この区分自体は、行政職のそれと大きく異なるものではない。

命令研修校長の命令に基づき参加するもの。 公務として対応。旅費支給、公務災害の対象。命令であるので拒否できない。
職免研修当該教職員の職務上有益と判断される研修に参加するもの。 職務専念義務免除で対応。
自主研修当該教職員の判断で勤務時間外に参加するもの。 勤務時間と重なる場合は、年次休暇で対応。
平原(1993)217pより作成

どの研修とするか

何が問題か

どのような研修が職務であり、つまり「命令研修」となるのか。これは、教育委員会ではなく、現場の運営を任せられた校長の裁量によると考えていいだろう。では、研修の種類を考えることは、何故必要なのか。

多くの自治体は、複数の学校を設置している。その学校ごとに「命令研修」の範囲に差異があるのはどうだろうか?

例えば、同じ研修に、A市X小学校教員Qは公務として参加し、A市Y中学校教員Pは職免で参加したとしよう。ここで運悪く研修会場で地震に遭ったり、火事があったり、あるいはトラックが突っ込んで来たらどうか。そして不幸にもQとPが怪我をしたらどうだろうか。Qは公務災害で、Pは私災害となるのか。これが妥当なのか。

この架空の事例から得る教訓は、「自治体の教育委員会としては、原則は各校長の裁量と考えつつ、各学校において、ある程度の目線合わせの指針を提示することが必要ではないか」ということだ。

法22条と判例

これを考えるにあたり、法22条を参考にする。

(研修の機会)
第二十二条 教育公務員には、研修を受ける機会が与えられなければならない。
2 教員は、授業に支障のない限り、本属長の承認を受けて、勤務場所を離れて研修を行うことができる。
3 教育公務員は、任命権者(…)の定めるところにより、現職のままで、長期にわたる研修を受けることができる。

教育公務員特例法(昭和24年法律第1号)

ここで、教育公務員のうち教員については、勤務場所を離れて研修を受けるためには本属長(校長)の承認が要件となる。この承認については、「校務運営上の支障、当該研修の社会的評価および態様、場所、参加の相当性等の諸事情を比較衡量して決める」とされている(札幌高裁判決昭和52.2.10)。この条文は、教育公務員のうち「教員」の研修をめぐるものであり、教員以外の教育公務員(校長や事務員)とは別に考える必要もあろう。また、前項で問題とした事例に直接適用して解決が実現するような条文でもない。

しかしながら、ここで示された判例の視点は、研修に際し「それを職務として扱うか、私的な研修として扱うか」を考えるにあたり、整理するために有益だろう。

まとめ

教育公務員の研修には3種類ある。このうち、個別の研修をどの区分に当てはめるかは、現場を預かる校長の裁量だ。
とはいえ、実際の運用に学校ごとの甘い辛いが極端であれば、場合によって教育公務員に不利益があるだろう。

そこで、教育委員会としては、ある程度の目線合わせが必要になる訳である。
その際、整理の軸は、以下のとおりである。

  • 校務運営上の支障
  • 当該研修の社会的評価
  • 当該研修の態様
  • 当該研修の場所
  • 当該研修の参加の相当性

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