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用語 行政学

自助・共助・公助の役割分担の見直し

定義

「自助・共助・公助」という言葉をよく耳にする。ここでは、この3つが学問的にはどのように捉えられているかを簡単に確認する。

・・・個人の自立を視野に入れた補完性は、改革の理念という以前に一つの現実でもある。個人の自立を「自助」、近隣コミュニティの協力を「共助」、自治体や国の公共サービスを「公助」とすれば、補完性とは自助を基礎に、共助がこれを支え、公助がそれらを支援する実態に他ならない。・・・現代人は、行政のサポートを所与と考えがちだが、日常の衣食住から就活・婚活まで、市民にとって生活の大半は自助・共助が基本である。

西尾隆ほか『現代の行政と公共政策』(放送大学教育振興会,2016)

これは「補完性の原則」の解説と合わせて、自助・共助・公助の関係性を解説した部分である。

役割分担の再検討

報道で知る事実や地震の経験に照らす限り、たしかに「行政のサポートを所与」と考える傾向は窺えるように思う。

しかし、自治体を取り巻く環境は今後ますます厳しいものになる。これから人口減少(特に就業人口の減少)を見据えれば、現在の事務事業の規模を維持していくことは甚だ難しい。

では、「財政が厳しいから現在の事務事業(公助)を縮小する」と言って納得を得られるだろうか。難しいだろう。単純に縮小すればいいという訳ではない。

この点、横山幸司先生の指摘-自治体戦略2040構想研究会の報告書(2018)を受けた議論-は、示唆が含まれている。そこでは防災を例に挙げる。いつ起きるか分からないのが地震や台風のような災害であり、かつ、発生した際には自治体の区域内のほとんどが対応を要する事態になる。つまり、対応を求める全てを十分にカバーするような行政対応は難しく、この意味で行政には限界がある。ゆえに、市民各員が自分で防災グッズを揃えるとか(自助)、近所や町内会で助か合うのが重要であり(共助)、自助や共助では対応ができない部分を行政が担うのがよいという(公助)。

重要なのは、これにより、100%公助である場合よりも、自助・共助・公助の適切な役割分担をすることで、結果として地域の防災力を高めることができるという点であるである。

これは「公から私への責任の押し付けでもなく、逆に私から公への依存でも」ない。そして「こうした役割分担は防災分野だけではなく、すべての行政分野に必要」なのである(横山,17P)。

こういう流れで重要な枠割を果たすのは。自治体のまちづくり担当課、町内会・地縁団体担当課であろう。これらの部局は、ともすれば、町内会の運営補助に終始しがちである。しかし、これからの自治においては、町内会の自立、すなわち共助の育成を促すような関わり方が大切である。町内会やNPOは、従前行政が担ってきた事務事業の担い手―それも委託先ではなく、公共サービスの提供者として―として、今後、その役割が求められていくのではなかろうかと。

参考

  • 西尾隆ほか『現代の行政と公共政策』(放送大学教育振興会,2016)
  • 横山幸司『行政経営改革の要諦』(サンライズ出版,2020)

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